SNSではイクメンぶるけど、実際は自分のことばかり。「育休中に資格取得」して妻から見放された男の末路は | NewsCafe

SNSではイクメンぶるけど、実際は自分のことばかり。「育休中に資格取得」して妻から見放された男の末路は

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SNSではイクメンぶるけど、実際は自分のことばかり。「育休中に資格取得」して妻から見放された男の末路は

日本では夫婦間の「レス」が深刻な社会問題になっています。夫婦生活の頻度が月に1回未満の状態を一般的に「レス」と定義しますが、リクルートが運営する『パートナーシップ調査2024』など複数の調査によると、この状態にある既婚カップルは5~6割にも上り、年々増加傾向にあります。夫婦間の性的な触れ合いが途絶えると、お互いの心にも少なからず影響を及ぼし、パートナーへの愛情や自己肯定感にも関わってくるため、その悩みは深刻です。

今回お話を伺ったのは、都内在住の会社員・タカシさん(仮名・32歳)です。結婚4年目で、2歳のお子さんがいます。ところがタカシさんが育休中にとった行動が原因で、夫婦関係に大きな亀裂が生じてしまったのです。

夫婦間で起きた「育休のすれ違い」

「正直、予想以上にキツかったです。家族の『いま』よりも『将来』を優先してしまった。結果として妻にも娘にもきちんと向き合えなかったことが、一番の後悔です」

取材開始まもなく、MacBookを開いたままのタカシさんはそう言って視線を落としました。半年間の“自己研鑽”を終えた今、彼の胸に最も重くのしかかっているのは「合格したかどうか」ではなく、「家族と自分の距離をここまで広げてしまった事実」だといいます。

「育休は赤ちゃんと向き合うための時間」そう信じて疑わなかった奥さまは、タカシさんの予想外の選択に凍りついたといいます。

「育休中に国家資格の勉強? つまり、私にワンオペしろってこと?」

男性の育休取得が推奨される今、半年間の休業期間を「キャリアアップ」に使うことにしたタカシさん。しかし、「家族のため」という名目を掲げながらも、その絶妙に空気を読まない言動が奥さまの心をじわじわと削っていきました。

上司からの「スキルアップ推奨」という甘い誘い、キャリアへの焦り、そして奥さまにのしかかるワンオペ育児の現実。タカシさんが学びを深めるほどに夫婦の亀裂もまた深まり、ついには夫婦生活のレスへと至ったのです。

そもそも、スキルアップと産後の家族ケアは両立できるものなのでしょうか? 平日の午前、都内の閑静なコワーキングスペースでの取材は、タカシさんの本音と後悔を赤裸々に映し出していました。

静かなコワーキングスペース、響くキーボード音

大きなガラス窓から初夏の日差しが差し込む午前10時。私は指定された都心のコワーキングスペースを訪れ、タカシさんとお会いしました。

淡いグレーの内装で統一されたスペースは、スタートアップやフリーランスが好んで利用する、いわゆる“おしゃれ系コワーキング”です。利用者のデスクにはMacBookやタブレット端末が並び、静かに文字を打ち込む音が規則的に響いています。そこにネクタイこそ外しているものの、会社員然とした黒いシャツ姿のタカシさんが姿を見せました。

入室許可証を首から提げたタカシさんは、真新しいノートPCと分厚いテキストを抱え、軽くうなずいて無言のまま席に着きました。PCの電源を入れると、すぐにオンライン学習ツールのダッシュボードが表示されます。タカシさんがキーを打つスピードは相当なもので、画面には自己学習用アプリやクラウドサービスのアイコンが所狭しと並び、彼の“効率至上主義”を物語っていました。

「家だと娘がすぐに起きてしまうので、ここなら集中できると思っていました」

ここには、仕事用のスーツを着る必要もなく、かといって自宅の生活感に邪魔されることもない、絶妙な“作業環境”が整っています。カフェスペースと仕切り付きのデスク、電源とWi-Fi、そしてカジュアルすぎない静寂が、彼の求める「効率」にぴったりのようでした。

机の脇には哺乳瓶の替え乳首がビニール袋に入ったまま置かれていました。パソコンやテキストとは不釣り合いにも見えるその“育児グッズ”に、私の視線は自然と引きつけられました。

「今朝は家族でここまで来たんですけど、妻と子どもはそのまま出かけるので、帰るまでにコワーキングのシンクで洗っちゃおうと思って」

何気ない話題でさえ、彼はどこか得意げで、その声には楽しげな響きさえありました。

「ほら、僕って効率厨なんで!」

そう言うと満足そうに画面へ視線を戻し、再びカタカタとキーを打ちはじめました。私が苦笑いを浮かべるしかない空気感の中、タカシさんの話を聞いているうちに、その印象はガラリと変わっていったのです。

“男性育休” 押し寄せる見えない重圧

タカシさんは大学卒業後、売上高数兆円規模の総合メーカーに入社し、法人営業を担当。入社3年目にしてトップ3%の成績を叩き出すなど、頭角を現しました。常に目標数字を意識し、効率的に契約を取るそのスタイルは「データドリブン営業」として社内でも一目置かれる存在だったそうです。

2年前の夏、第一子となる長女が誕生。社内では近年、男性の育休取得を推奨する動きが高まっており、直属の上司も満面の笑みで背中を押してくれたといいます。

「ウチの部署の見本になれ。復帰後、主任のポストを空けておくからな」

ここまで聞くと理想的な育休スタートのようですが、現実はそう単純ではありませんでした。

タカシさんの所属部署には、「男性育休はスキルアップのチャンス」といった空気が確かに存在していたのです。企業のダイバーシティ推進や、政府が掲げる「男性育休取得率向上」の方針とは裏腹に、育休を自己研鑽の期間として“活用”するよう暗に期待されていた……そんなプレッシャーがあったと、彼は振り返ります。

「嫌どころか、むしろ燃えましたね。今思えば、上司や会社の思惑に乗せられていたのかもしれませんが…」

冗談めかしながらも、こちらの反応をうかがうように笑みを見せるタカシさん。社内で評価され続けてきた彼にとって、「育休」すらもキャリア加点の材料に見えていたのかもしれません。

「結局、奥さんが一人で子育てを頑張ってくれたんですよ。でも、当時の僕は“仕事してるんだからイーブン”だと思ってました」

この「イーブン」という言葉にこそ、根深い認識のズレがありました。

“育児と自己研鑽”を天秤にかけることが果たして本当に平等と言えるのか……。

当時のタカシさんは、夫婦のバランスが崩れていくその予兆に、まだ気づいていなかったのです。

「国家資格、取れば昇進スピードが違うぞ」上司の“甘言”が火をつけた

タカシさんの育休が正式に決まると、上司から再び声がかかります。

「家にいる時間を無駄にするな。もっと上を目指すなら国家資格だ。取れば昇進スピードが段違いだぞ」

その資格とは、コンサル的な視点から企業の経営課題を分析し、改善策を提案する国家資格。法人営業を担当するタカシさんにとって、商談を深めるための武器になることは間違いありませんでした。

「上司って、“未来の自分”みたいな存在なんですよ。『俺の若い頃にこんな制度があったらなぁ』って熱く語られて。『おまえなら絶対受かる』なんて言われたら、やらない手はないですよね」

彼は声真似まで交えながら語り、メガネの端を押し上げる上司の仕草まで再現してみせます。上司に期待され、応援されているという感覚は、まるで恩師に背中を押されているようだったそうです。

けれど、タカシさんが資格取得に燃え上がるほど、奥さまとの間には温度差が生まれていきました。その兆しは、すでにこの時点から漂っていたのかもしれません。

勉強漬けタイムラインと、忍び寄る“ワンオペ”

育休中のタカシさんの平日は、午前5時に始まります。まだ真っ暗なリビングで、家族が眠る中、イヤホンを装着してオンライン講義を視聴するのが日課だったそうです。

「娘が泣く前に勉強時間を稼ぐ」という発想で、体力の許すかぎり早起きを徹底していたといいます。

6時半になるとトースターでパンを焼き、「今日も理想のキツネ色!」とスマホで撮影してインスタにアップ。「#朝活 #効率厨 #やればできる自分」といったハッシュタグを添え、少なくとも50件ほどの“いいね”がついていたそうです。

妻の視線は「またやってるよ……」と呆れ気味。それでも彼は気に留めることなく、SNS投稿を続けていました。

8時すぎには娘が起床。タカシさんも着替えやオムツ替え、ミルクの準備などを「手伝い」というスタンスで行っていたそうです。といっても、ボタンを留めたりオムツを渡す程度の“補助”にとどまることもしばしば。それでも「育児してるオレ」をセルフィーで撮り、「#男性育休 #子育てパパ #時短テク」などのタグとともに投稿することは忘れなかったといいます。

「お恥ずかしいですが、当時はそれが“イケてる”と勘違いしていたんです」

実際には、ほぼすべての育児を奥さまが担っていました。タカシさんは「今日はコワーキングスペースに行くから」と手伝いを早めに切り上げ、ワンオペを助長していたのです。

移動中もスマホで単語帳アプリを開き、電車内でも黙々と暗記を続ける。そんな姿勢が、「育児は妻に任せるもの」という意識を、ますます強化していったといいます。

午前9時からはコワーキングスペースで過去問と格闘。Slackやチャットで同僚と連絡を取りながらも、集中力は途切れません。「効率」はタカシさんにとって美学であり、生き方そのもの。10時と15時にそれぞれ10分の休憩を挟みつつ、昼食はホットサンドを片手に模試動画を倍速で再生する「ながら学習」。まさに勉強漬けの一日です。

夕方6時に帰宅すると、妻が用意した離乳食を見て「映えそうな明かりだね」と撮影用ライトを当ててスマホを構える。すると娘が泣き出して撮影は中断――そんな場面が日常茶飯事だったそうです。

唯一、娘との直接的な関わりといえるのはお風呂の時間。タカシさん自身も「娘と触れ合える貴重な時間」と語りますが、「早く終えて勉強に戻りたい」と感じることもしばしば。娘がもっと遊びたがって泣いても、あとは妻に任せてしまっていたといいます。

夜8時には書斎に籠もり、寝かしつけの背後でカタカタとキーボードを叩き続ける。夜泣きが聞こえても、耳栓やノイキャン付きイヤホンで完全シャットアウト。午後11時に就寝するまで、夫婦の会話はほとんどありませんでした。

奥さまの浅い眠りや娘の夜泣きは、タカシさんのスケジュール帳には書き込まれていなかったのです。

こうしてタカシさんの一日は、まさに“勉強漬け”。育休を機に夫が育児を分担してくれると期待していた奥さまにとっては、むしろ「自己研鑽に没頭する夫を支える」状況。時間的には家にいるのに、精神的にはいないも同然。その落差が、奥さまの心を少しずつ蝕んでいったのでした。

「いま思えば、あのルーティンは“家族を巻き込む計画”じゃなく、“家族を回避する計画”だったのかもしれません」

取材中、当時のタイムラインを語り終えたタカシさんは、ふっと小さくため息をつきました。

その声は軽やかでも、言葉の奥には「見たくなかった現実」を振り返る痛みが滲んでいるようでした。

「レス宣言」静かに崩れた“夫婦の夜”

育休3カ月目に入ったある蒸し暑い夜。娘を寝かしつけた奥さまはリビングの照明を落とし、書斎へ向かおうとするタカシさんの袖をそっと掴みました。

「ちょっと話、いい?」

AirPodsを外しながら、タカシさんはわずかに眉を上げます。この時間は、彼にとって勉強のラストスパートに集中する時間。声をかけられること自体、想定外だったのです。

「私、もうあなたと肉体関係を持つ気持ちになれないの」

「え、なんで?」

タカシさんの中では「妻には好かれている」という認識があり、不満などあるはずがないと考えていました。さらに、SNSの“いいね”が家庭内評価に直結すると本気で信じていたフシもありました。

「……SNSの“いいね”は、私の気持ちじゃないよ」

たしかに、華やかな写真や前向きな投稿には外部から称賛が集まります。でも、それは妻の現実を救うものではない……むしろ「取り繕われた夫婦像」とのギャップが、彼女をさらに苦しめていたのです。

タカシさんは一瞬「確かに」とうなずきながらも、こう続けてしまいます。

「でも、君のフォロワーも増えるかもしれないし……」

その瞬間、妻の表情が氷のように固まりました。夫婦の間に横たわる、深く静かなズレ。この夜を境に、ふたりの営みは途絶えました。

そのときのことを思い出すと、タカシさんの表情は曇ります。

「“SNSの高評価”なんて言葉を出したとき、妻の顔色が変わるのがわかりました。それでも僕は『何が悪いの?』と思っていた。あの視線こそが“緊急シグナル”だったのに……」

水を飲みながら、彼は静かに続けます。

「気づいていたのに、自分が悪いと認める勇気がなかったんです」

本編では、“育休=自己研鑽”、”SNSの「いいね」=家族からの評価につながる”と信じて突き進んだ32歳男性タカシさんが直面した現実、そして葛藤をお伝えしました。

▶▶育休で資格取得した32歳夫。妻からのレス宣告、未読スルー、社内報での告白…それでも夫婦はやり直せた?
では、彼が気づいた“本当の失敗”と、その先に訪れた変化をお届けします。

※個人が特定されないよう設定を変えてあります

※写真はイメージです

《OTONA SALONE》

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