バツイチ女性が初婚男性と恋に落ちたら。元TBSアナが思わず深く感情移入してしまったのには理由があって | NewsCafe

バツイチ女性が初婚男性と恋に落ちたら。元TBSアナが思わず深く感情移入してしまったのには理由があって

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バツイチ女性が初婚男性と恋に落ちたら。元TBSアナが思わず深く感情移入してしまったのには理由があって

  元TBSアナウンサーのアンヌ遙香がニッチな眼差しで映画と女の生き様をああだこうだ考え、“今思うこと”を綴る連載です。ほんのりマニアックな視点と語りをどうぞお楽しみに!

【アンヌ遙香、「映画と女」を語る #11】

『幸福の黄色いハンカチ』を観たことがありますか?

名作が名作であるのはやはり理由があるし、観ていない名作があるならば一日も早くそれは観ておくべきだということを、アラフォーにして強く実感しています。みなさんは『東京物語』や『男はつらいよ』、そして…『幸福の黄色いハンカチ』を見たことがありますか?

 

恥ずかしながら私は、この歳まで『幸福の黄色いハンカチ』を観たことがなかったのです。あれだけの名作、山田洋次監督の数ある代表作のうちの1つであり、あの高倉健さんの代表作ともいえる、涙なしには見られない名作。40歳になる前にこの作品に出会って良かったと、私は強く実感しています。

倍賞千恵子さんのトークショーを北海道にて開催!

この度、山田洋次監督の作品では常連中の常連と言っても良い倍賞千恵子さんが北海道にいらっしゃるということで、特別なトークショーが開催される運びになりました。

開催は5月10日。北海道はまだまだ肌寒い中で、やっと桜が開花する時期です。その桜の開花とともに、寅さんの妹「さくら」役の倍賞さんがやってくるということで、「倍賞千恵子トーク わたしと映画と北海道」というタイトルのトークショーが、『幸福の黄色いハンカチ』4K版の上映会後に行われました。


1941年生まれの倍賞さんはとにかくチャーミング。作品をイメージしたという黄色いチェックのスカートがとってもよくお似合いでした。そしてお声も、スタイルも、お顔もずーっと変わらない。「体力が続く限り、また声帯が続く限り、歌も演技も現役で続けたいとおっしゃっていました。溢れんばかりのエネルギーが全身から迸っていました。素敵。


さて、『幸福の黄色いハンカチ』はどんなお話かご存知ですか?

『幸福の黄色いハンカチ』とは

北海道が舞台。とある不幸な理由から、謀らずも殺人を犯してしまった男、勇作(高倉健)。網走刑務所で模範囚として刑期を終えた男は、たまたま北海道に来ていた二人の若者(武田鉄矢、桃井かおり)とともに道内をめぐることになります。

自分の素性についてなかなか若者らに明かせなかったものの、警察の検問に当たってしまったことで自分の過去を明らかにせざるを得なくなり、そして最愛の妻(倍賞千恵子)への想いをも、とつとつと語り始めるのでした。


あの人は自分を待っているはずなどない。

「ただ、もし自分を待っていてくれるなら、黄色のハンカチを家の庭先にぶら下げていて欲しい」と一枚の葉書を妻に出してしまった男。

黄色いハンカチは出ているのか、いや、引越ししている可能性だってある。しかも厳密にいえば、刑期中自分の方から離婚を持ちかけ、書類上は「元妻」になってしまっている。

あんな良い女、すぐに違う人の奥さんになっているに違いない。現実を知りたいような、知りたくないような。


彼女とともに暮らしていた夕張に、向かうか向かわないか…悩みながら歩みを進めるロードムービーです。第一回日本アカデミー賞や第51回キネマ旬報賞など、国内におけるこの年の映画賞を総なめにしました。

映画は、映画館で、が最高な理由。

今回私は大きなホールで上映会の形で拝見しましたが、やはり映画は、映画館で観ると格別な感慨がありますね。武田鉄矢さんのコミカルで元気でまっすぐな若者の姿に、会場中がわっと沸いて、くすくすとした笑い声がさざなみのように広がるあの一体感。


寅さんでお馴染みの渥美清さんが人情味あふれる警察署長を演じていますが、渥美さんが画面に登場した途端に、懐かしさやら、幸福感やら、寂しさやら、、、一言では言い表せない感慨が会場を包んだりもしました。

そして映画後半に行くにつれ、会場は徐々に鼻をすする音、ティッシュをカバンから探し当てる音などが目立つようになりました。私がグッときたのは、高倉健さんの回想シーン。二人がどうやって夫婦になったのか、を振り返ったとき。

アラフォーの私がぐっときたシーンは

九州でヤンチャをしていたものの、このままじゃいけないと一念発起して夕張の炭鉱に単身やってきた勇作。いつものスーパーのレジ係、光枝(倍賞千恵子)に一目惚れするものの、なかなか声をかけることができません。しかし彼女もずっと彼のことを気にかけていました。そしてやっと二人で出かけるようになり、ある日二人の距離がかなり近づきそうになるものの、逃げるようにその場をはなれる光枝。


なぜか自分を避けるようになった光枝に対し、どうしようもない焦燥感に駆られていた勇作でしたが、嵐の夜、彼女が全身びしょ濡れで彼のもとを訪れます。自分は過去に一度結婚している、それでも良いのか、と思い詰めたように聞くのでした。その日から二人は、唯一無二の、深く愛し合った夫婦になったわけでしたが、、、

私はこのときの「それでも良いのか」とつぶやく倍賞千恵子さんの表情が泣けて泣けて仕方ありませんでした。

再婚女性と、初婚男性の恋。

相手は初婚、でも自分の方は一度結婚の経験があり、しかも過去に色々あった。だからこそ彼の胸に飛び込んでよいものかと葛藤があったわけです。この映画は1977年公開、ですが、この感覚は、、、令和に生きる私も、なんとなくわかる。私がもし同じ立場だったら、それでも良いのかと聞いてしまうかもしれません。愛しているからこそ。


今でこそバツイチやバツニだなんて別に珍しくもなんともないかもしれないですが、新しい恋を始めるにあたり、なぜか相手に対し深い負い目を感じてしまうのは、よくよく私もわかります。自分の方が色々と経験を重ねている分、色々なことが見えて、わかってしまい、むしろ臆病になり自分を追い詰めてしまうこの感じ。

私は光枝に深く深く感情移入。このあとの流れ、ネタバレにはなりますが、みなさんなんとなく話の流れをご存知だろうと思いますので続けます。彼をずっとずっと待っていたし、これからもずっと待ち続けるし、愛の深さは変わらないどころかもっと深くなっているよ、という彼女からの愛の証が、大量の、パタパタと風になびく黄色いハンカチだったわけです。


一枚や二枚では済まない、何十枚と風になびく黄色いハンカチ。おそらくあれは、お店にあったものを買い占めたのでしょう。彼女が黄色いハンカチをぶらさげるシーンそのものは作品にはないですが、その一枚一枚をどんな表情で括り付けていたのだろうと思うと、私はぐっときます。あの大量のハンカチ、とにかく泣けた。上映会後お手洗いに立ったら、頬のファンデは完全に落ち、鼻が真っ赤になっていました。

ハンカチをたなびかせるのに、三日待った山田洋次監督。

倍賞千恵子さんはその後のトークショーで撮影秘話として、あの風にパタパタとたなびくハンカチを撮影するため、よい風を待つべく山田洋次監督は2~3日待った、と明かしてくださいました。人工的な風では出せない、ひたむきにパタパタと勢いよくなびくハンカチたち。あの名シーンは、自然の力がもたらす奇跡を待った結果ともいえるのです。

アラフォーになり、人生の紆余曲折を体験したからこそ、泣けて泣けて仕方ない、「幸福の黄色いハンカチ」。大人になったな、と感じる瞬間が最近多いと感じる貴方にこそ、今、観ていただきたい作品です。

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《OTONA SALONE》

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