こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。
【アラフィフライターの介護体験記 住まい探し編】17
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▶見学で「ココは見るべき」と言われたポイント
いざ、サ高住の見学へ! 介護現場を知る叔母に「ココは見るべき」と言われたポイント
認知症の症状がエスカレートしていく義母。夫と私は「田舎の義母宅を訪れ『時間とお金がかかるうえ、何らかの不安を感じて帰宅する』を繰り返すなら、我が家の近くで暮らしてもらったほうがいいのでは?」との結論に至り、ひとまず住まいに関する情報収集から始めることにしました。
このとき、お義母さんは医療機関(脳神経外科、もの忘れ外来など)の受診を拒み、認知症が「グレーゾーン」だった時期。あくまでも自分は自立しているとし、1人暮らしを強く希望しています。
そんな中、地域包括支援センターで教えてもらったサ高住は、バリアフリー構造の個室で自由度の高い生活を送りながら、生活相談や安否確認をしてもらえる。さらに食堂が付いているところであれば、入居者と交流が深められるかもしれない。
「サ高住では生活支援サービス(食事の提供や掃除・洗濯など)が受けられる所もあるので、イメージを掴むためにも直接見に行ったほうがいいですよ」とのことで、さっそく見学することになりました。
ちなみに、いつも何かと気にかけてくれている(介護ヘルパーの資格を持つ)叔母に報告したところ、「見学の際に周辺環境、部屋の間取りや陽当たり、収納スペースなどをチェックするのは普通の物件と同じ。でも、ほかにも確認してほしい所があるのよ」と教えてくれたのが、こちらの3つ。
1. スタッフと入居者について 挨拶をした際の表情や入居者とスタッフのコミュニケーションの様子など
2. 食堂ほか共有スペース 空間の広さや明るさ、清潔感、訪問者(家族など)が一緒に利用できる場所があるかなど
3. 掲示物 イベントのお知らせやスタッフの紹介、(食事提供がある場合)メニューの情報など
特に「スタッフと入居者について」は、叔母が「特に気にしてほしい」と指摘した点。スタッフについては「受付や当日案内してくれる方はもちろん、食堂や訪問介護事業所を併接している所なら、そこで働くスタッフとすれ違うことがある。挨拶をした際の表情、入居者への対応(言葉遣い)、スタッフ同士のコミュニケーションなども見て」とのことでした。
▶見学で分かったリアル
パンフレットだけでは分からない! 見学に行ったからこそ知るリアル
確かに働く人に余裕のなさや疲労感などがあれば、自ずとサービスを受ける側にも影響が及んでしまう。毎日過ごす場所だからこそ「ちょっとした違和感も見逃さないで!」と言う叔母。これまで介護の現場で働いてきただけに、重みのある言葉でした。
入居者についても同様で、明るく生き生きとした表情から「今の暮らしの満足度」を読むこともできる。(もちろん要介護度にもよるけれど)スタッフの声かけに楽しそうに応じていれば、それは信頼関係の表れとも取れる。叔母からは、「そういった目線で、実際にお義母さんが暮らすことをイメージしてみるといい。パンフレットでは分からないことが見えてくるよ」といったアドバイスも!
それに関連しているのが、次のポイント「食堂ほか共有スペース」と「掲示物」。お義母さんにとって、友人もいない初めての土地での暮らしは不安が大きいはず。食堂や共有スペースがあり入居者と交流を図れること、イベントなどへの参加によって、充実した時間を過ごせることは重視したい点でした。
▶「お酢たっぷりカレー」以降、料理が難しくなってきた義母
「お酢たっぷりカレー」以降、料理が難しくなってきた義母
また、当時のお義母さんは引っ越しの話題を出すたびに「キッチンは広くなきゃ絶対ダメ!」と繰り返していましたが、実際は料理をするのがだんだん難しくなってきた模様。(過去の記事にも書いたのですが)料理上手だったことを疑う「お酢たっぷりのカレーライス」「味付けが極端に濃い肉じゃが」や「異様な速さで減っていく調味料」は、それをしっかり物語っており……。
この辺りからお義母さんは、料理の味付けを忘れたり、分量が分からなくなったりしていたのかもしれません。あとから医師や介護士の方に聞いたところ、認知症により味覚や嗅覚障害の症状が出る場合があるとか。
※記憶力や判断力の低下によって、味付け量などが分からなくなるケースもあると考えられています(味覚障害は、加齢による身体機能の低下などが原因とも)。
もちろん、お義母さん自身にその自覚はないので「キッチンの広さ」にはこだわり続けていましたが、私たちとしては「料理は厳しくなるだろうから、サ高住に住むなら食事の提供サービスは必須」と考えるようになりました。
そこで一つ目に見学に行ったのは、我が家から徒歩圏内の食堂付きサ高住。案内してくれた施設長も丁寧で、入居者の皆さんも明るく楽しそう。中には「こんにちは~」と挨拶をしてくれる方もいました。
しかし詳細を聞いてみると、「実は今、入居待ちの方がかなり多い状況でして。ご案内できるのは、相当先になってしまうかもしれません」とのこと。「まぁ1軒目だし、今回は勉強ということで」と気を取り直し、ひとまず基本的な情報だけは記載して、終了! ところが、この後も苦戦することになり……。それはまた、次回お話ししたいと思います。