こんにちは、ライターの岡本ハナです。
私の長女は、ADHDと強迫性障害を併せ持つ、いわゆる“発達障害児ちゃん”。
療育やペアトレでよく言われるのが、「小さなことを大きくほめましょう」という声かけの大切さ。でも、これって、実際の家庭ではかなり限られた場面でしかできないんですよね。
朝は学校の準備でバタバタ、帰宅後も夕食・入浴・宿題チェックに下の子の世話と、気がつけばあっという間に寝る時間。「ちゃんと見てあげたい」という気持ちはあるのに、完璧な声かけなんて夢のまた夢です。
そんな日々の中で、私が強く思うのは……「学校に、もっと頼りたい」ということ。
今回は、長女の自己肯定感を自然に引き上げてくれた、ある先生とのエピソードをご紹介します。
ざわめく体育館で行われたVR授業
長女が小学6年生だったころ、彼女の通う学校では何とも未来的な試みが行われていました。それは、VR(バーチャル・リアリティ)を活用した授業!その日は、体育の授業で跳び箱の動きをVRでシミュレーションするという、なんとも斬新な内容でした。そして、なんと体育館にはテレビ番組の撮影クルーまでやって来ていて、体育館は少しソワソワした雰囲気だったとか。
さて、長女はというと、跳び箱が大の苦手。家をでる時に「体育の授業やだなぁ」とぼやいていたほど。
そんな長女に衝撃的な展開が……!
予想外の抜擢!シリモチをついてしまう跳び箱が……
なんと先生が彼女を指名して、VRを使ったビフォーアフター実演のお手本役に抜擢したのです。長女が「え、私なの…?」と固まる瞬間が目に浮かびます。
そして迎えた実演タイム。
4段を跳ぶ時もシリモチをついてしまう長女でしたが、見事に成功!友達もその様子に大喜び。
みんなの前で苦手なものに挑戦すること、ましてやテレビカメラがある前だなんて、大きな勇気がいるものでしょう。そして「どうしてできるようになったの?」と聞かれた時も、具体的なコメントを堂々と述べる姿を見せていました。
あの指名に隠された先生の思いは?
私がこのエピソードを初めて知ったのは、ママ友が送ってくれた動画を見た時のこと。跳び箱を堂々と飛び、成功の喜びを語る長女の姿に「この子、本当にうちの娘?」と驚いたのを覚えています。でも同時に、どうして先生が長女を指名したのか、不思議でなりませんでした。本来、長女は積極的に手を挙げるタイプでもなければ、みんなの前でリーダーシップを発揮するような性格でもありません。
その疑問がずっと頭の片隅に残っていたある日、学校に行く用事があった私は意を決して担任の先生に尋ねてみることにしました。
「あの……正直に言いますけど、運動神経の良い子って他にもたくさんいましたよね?娘を指名するって、ある意味賭けというか、かなり勇気が必要だったんじゃないですか?」
ちょっぴり本音を混ぜつつ、冗談めかして聞いてみたのですが、先生は真剣なまなざしで答えてくれました。
「いいえ、全然心配なんてしていませんでしたよ」
そのあっさりとした言葉に、私は思わず固まってしまいました。いやいや、普通はせめてちょっとぐらい心配するでしょう?と思わず心の中でツッコんでしまうほど。
でも、先生の声には揺るぎない信念がこもっていて、その自信に逆に圧倒されてしまうほどでした。
本編では、跳び箱が苦手な娘に託された“主役”の役割と、それを支えた先生のまなざし、そして「なぜこの子を選んだんですか?」という母の問いに、先生が迷いなく返した言葉をご紹介しました。
続いての▶▶先生が見抜いた、娘の「良いところ」。周囲と関わりながら子どもは成長していく
では、娘の“挑戦”がもたらした変化と、学校という場が教えてくれた大切な気づきについてお伝えします。