日々が飛ぶように過ぎていくなか、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのように横たわる五里霧中ですが、そんななか「ほんのちょっとしたトライ」で自分のあり方を捉えなおすには、「最初の一歩」に何をしてみればいいのでしょうか。
ライター野添ちかこがオトナサローネ読者にインタビューを行い、リアルな女性の人生をお届けする本シリーズ。今回は、乳がんが見つかったユミコさんが、50歳の誕生日を機に第2の人生に向けて挑戦するお話をご紹介します。
◾️ユミコさん
大阪府在住の50歳。56歳の夫、4月から大学生になる息子と3人暮らし
【私を変える小さなトライ#23】
会社の健診で乳がんのステージ1。50歳を機に「会社を辞めよう」
昨夏、乳がんが見つかりました。小学校1年生からずっと野球をしていた息子が高校3年生の8月で引退し、「ちょっとゆっくりできるかな」と思っていた矢先のできごとでした。
会社の健康診断で見つかった乳がんはステージ1。ほとんどゼロに近い1で、まだシコリにもならないほどの大きさ。自覚症状は全くありませんでした。医師から告げられたときは「本当に?」という実感のない驚きがありましたが、次第に「このまま仕事を続けながら治療できるのだろうか?」と漠然とした不安が募っていきました。
検査を重ね、11月に手術をしました。とはいえ、手術の前後ともに体調は変わらず、知らない人が見たら私が病気だとは思わなかったでしょう。夫の勧めもあって、昨年内は会社を休職し、乳がんの部分切除手術を受けたあと、2カ月の放射線治療をしました。仕事は続けようと思えば続けられる。でも、50歳の誕生日を迎え、さらに春から息子が大学生になることを考えたとき、「今が決断のタイミングかもしれない」と感じたのです。
「思えば、自分のことは後回しの人生だった」50歳で再スタートを切る
定年までざっくり10年。もともと、「子どもが大学生になったら、会社員は辞めようかな」とぼんやり考えていました。それが今回の乳がんで、一気に現実味を帯びました。
一度がんになったら、再発の可能性もゼロではありません。今後どう生きていきたいのかを考えた結果、「50歳はまだ体力もあるし、再スタートを切るのにちょうどいい年齢だな」「早期発見はむしろラッキーで命拾いした」と、前向きに捉えることにしました。
これまで家族中心の生活を送り、自分のことはいつも後回しでした。子育てがほぼ終わった今、ようやく自分の体と向き合う時間が取れる。そう思うと、少し心が軽くなりました。
仕事と子育てを両立するために、自分の時間を犠牲にした17年
振り返ると、子どもが2歳のときからフルタイムで働き始めました。通常は1泊2日で行くような出張も、私だけ始発の新幹線に飛び乗って日帰りでこなす。土日は早朝4時に起きて野球の送り迎えをする。そんな忙しい日々を当たり前のように過ごしてきました。
子どもが中学受験をしたので、自分の仕事と子どものサポートで、ほとんど記憶がないほど忙しい時期もありました(笑)
唯一、自分の時間を持てたのは、子どもが小学5年のとき。塾に行っている時間を使って、ランニングの練習をし、「渋谷・表参道 WOMEN’S RUN」に挑戦しました。実は、高校時代は長距離のマラソン選手だったんです。でも、そんな時間が取れたのはその1年だけでした。
本編では、仕事と子育てで慌しい日々を過ごすなか、50歳を目前に乳がんが見つかり、会社を辞める決断をしたユミコさんの話をお届けしました。
続いての▶▶「『よし、学校に行こう』と決めた私。女性は50代からが本当に自由なのかも…と思えてなりません」
では、ユミコさんが50歳の誕生日を機に、目指そうと決めた「ある職業」について、お聞きしました。