こんにちは。インテリアアートスタイリストの胡桃(くるみ)です。このコラムでは、絵のある生活の提案をしてみたいと思います。
さて、今回のテーマは「最初の1枚」最初に買う運命の一枚目です。まずは、オークションの使い方、そして買い方を2回に分けてご紹介します。
【インテリアアートスタイリストが教える「アートのある暮らし」#2】前編
「オークションって安全なの?」だいじょうぶです、試してみて!
さて、最初の一枚は何を書いましょう? 私からのお勧めは版画やシルクスクリーン。いきなり高いものを買ってはいけませんよ。あとは、好きだった映画のポスターやアーティストの写真なんかも良いですね。オークションには結構そういう物が出回っています。
最初の1枚でシルクスクリーンや版画を進めるのは、印刷物とは違う発色や感動が得られるから。油絵もさらに良いのですが、ここは手頃かつ飾りやすい版画を狙ってみましょう。
アートを楽しむには「買ってみる」のが一番。ハードルを低めに、5,000円ぐらいを目安に、気に入ったものをエイヤッと落札してみましょう! といっても特別な業者に登録しなくても大丈夫、おなじみ「ヤフオク」でよいのです。まずは、Yahoo!オークションの「ホビー、カルチャー > 美術品 > 版画」を開いてみましょう。
- 人気のメーカー・ブランド
- 注目のオークション
- 売れ筋の製品ランキング
などカテゴライズされていますが、正に玉石混交。ここでメゲてしまう人もいるでしょう。でも、もう少し頑張って!
何を買えばいいのかわからない…そんなときは「思いついた/好きな」アーティストで検索
では、試しに若い頃少しアートっ子だった方は、お好きなアーティスト名で絞ってみましょう。例として、我々世代でポピュラーな作家、ピカソ?マチス?ウォーホール? まずは「マチス」で絞ってみます。
あら?巨匠なのになかなか手に入りそうなお値段が並びます。でもでも、ここからが大事です。ガッツいてはいけません。
【非常に重要なプロのコツ】買うものを選ぶ前に「落札相場」を確認する!
この作業をするかしないかで、お買い物の「確実さ」が格段に変わります。これこそがヤフオクを使う意義の1つと言っても過言ではない。アーティスト名で絞り込むと、右上に「マチス」の 落札相場を調べる」というリンクがあります。すると、過去180日間で落札された商品の相場が出てくるのです。
平均1万円。大きさにもよりますが、これが相場になります。意外とリーズナブル! 制作当時であればこの何倍もしたはずですから、だいぶお安いということがわかります。どうでしょうか、「アートは高い」という印象が激変したのではと思います。
ただ、よく見てください。リーズナブルな作品にはポスターやポストカード、複製画などが混ざっています。ええ、残念と思うかもしれませんが、実はポスターやレプリカも「悪くない選択」です。巨匠ものを手に入れたい場合は以下がおすすめです。
- 有名なギャラリーや美術館の個展ポスター
- 手持ちのポストカードを額装する
- 複製画・レプリカをあえて狙う
万が一にも「贋作」を掴まないために気を付けるべきことは?
せっかくの最初の1枚目、実はなんでも良いのですが、間違いなく思い入れのある1枚になります。わかって買う分にはいいのですが、本物と偽って高いお金を払わされるのは腹が立つもの。よくあるパターンではこんな偽物があります。出品者のプロフィールや「その他の出品」などもよくみておきましょう。
- 画集をバラバラにして額装したもの
- ジークレー[Giclee]という高性能インクジェットプリンターで出力する複製版画
- 作家の直筆サインや記載のないもの
- 出品者の評価が低い、出品物に脈絡がないなど
さて、じゃあ、どうやってお気に入りの1枚を見つけるの? まず、私からのお勧めは版画。リトグラフや銅版画などです。写真やポスターもいいですが、手に入れた喜びが違います。1枚1枚手刷りした良さが伝わります。ただ、マチスの例で紹介した通り、難しい罠もいっぱい。有名な作家はそれだけ贋作が多いものです。
では、日本の作家はどうでしょう? 今回はお施主さんのお宅に猫がおりまして、大の猫好き。ですのでまず「ホビー、カルチャー > 美術品 > 版画」カテゴリで「猫」を検索してみました。
これまた玉石混交! でも、「あーこの絵かわいいな!」と選びやすくないですか? 全部見ては迷ってしまうばかりなので、ここは左の「検索条件」で値段上限を5,000円に絞ってみましょう。そして、気になるものを「お気に入り」に入れてから見比べます。
じつは今、昭和から現代にかけての洋画はものすごくお買い得。買うなら最後のチャンスかも
今、特定の作家を除いた昭和期〜現代画家の作品はとても値が下がっています。
加えて、日本では2ndマーケットでの著作権は考慮されないので、本当に申し訳ないくらいのプライスであることも多々あります。この辺の事情はまたの回に書くとして、作品が気に入ったら、作者の名前をネットで調べてみましょう。それなりの作家であれば、個展のプロフィールやwikipedia、作者のHPなどが出てきます。
ここで私がオススメしたいのは、「あえて」知らない作家の絵を買ってみること。有名な絵のレプリカを買うのも悪くはないですが、それだとあまり楽しみが広がりません。
そこで、今回購入した作品はこちら。日本の作家、荻太郎先生の銅版画です。5,250円で落札!
日本の作家の作品を探すときのチェックポイントはこんな感じ。
- web上でお名前が検索できるか
- どこで個展を開いているか(国公立美術館、有名画廊や一流百貨店などでの個展歴)
- 美術系の出版社から画集が出ているか
作者自身のHPだと好きなこと書けますから、あればwikipediaやギャラリー掲載のプロフィールを参照すると良いでしょう。間違っても難しい文芸書で調べぬように。疲れちゃいますからね。
エディション番号と自筆サインについて、知っておくべきこと
版画を購入する際に知っておきたい点ですが、この左側の番号は、版画やリトグラフ、写真作品などの限定複製作品に関する情報を示すエディション番号です。
- エディション番号は通常、分数の形式で示されます。例えば、133/150は、150部限定のうち131番目の作品であることを意味します。一応、番号が若いほど良いとされています。
- 多くの作品にはアーティストによる署名があり、エディション番号とともに作品の正当性を示す証明として機能します。その他、ギャラリーや発行元からの証明書が付属することもあります。
- また、アート作品のエディションを決定する前に、試験的に制作されたプリントに付けられる番号や表記が行われることがあります。通常、「AP」「E/A」(Artist’s Proof)、「PP」(Printer’s Proof)、「TP」(Trial Proof)などの記号が使われます。市場に出回ることは少ないで、販売される場合通常版のエディションよりも高い価値を持つことが多いです。その希少性とアーティストの個人的な関与が理由です。
なぜ真贋にこだわるか、有名無名にこだわるか。一つには、やはり皆が良いと認めた絵には力があります。手に取った時の感動もひとしお。また、身銭を切って購入した絵の作家や背景は知りたくなるもの。それがあなたの「最初の1枚」という物語と相まって、特別な1枚となるのです。
まず今回は買い方にフォーカスしましたが、もう少し深掘りして「運命の最初の1枚<後編>」に続きます。
つづき>>>アートは難しく考えずに「ぱっと見」で買うに限る!あとから「この作家さんどんな人なのかな」と世界が広がるから
プロフィール
インテリアアートスタイリスト 胡桃(くるみ)
ふと購入した絵画をきっかけに「絵のある生活」の楽しさを実感。インテリアに合わせた絵のコーディネートを中心に活動中。gallery mésange主宰。