【モデルプレス=2024/11/23】Lil かんさいの大西風雅が主演を務める音楽劇『姉さんは、暖炉の上の、壺の中—My Sister Lives on the Mantelpiece』(@東京・CBGKシブゲキ!!)が11月21日に開幕。初日観劇レポートが到着した。Hey! Say! JUMP知念侑李、Lil かんさい大西風雅との“お揃いパーカー”説に言及◆大西風雅主演音楽劇「姉さんは、暖炉の上の、壺の中」本作は、OFFICE SHIKAが数々の海外児童文学を演劇にコンバートする企画シリーズの第1弾。その船出の作品として選ばれたのが、イギリスの児童文学賞であるブランフォード・ボウズ賞に輝いた『さよなら、スパイダーマン』だ。ロンドンで発生したイスラム過激派による同時多発テロがきっかけでバラバラになってしまった家族の再生を、末っ子の10歳・ジェイミーの視点から描いていく。演出は、原作に惚れ込み、自ら舞台化を企画した劇団鹿殺しの菜月チョビ。脚本は、同じく劇団鹿殺しの丸尾丸一郎。そして、主人公・ジェイミーを本作が舞台初主演となる大西が務める。(modelpress編集部)◆大西風雅の無垢さが、本作を嘘のない物語にしたまず深く胸に沁みるのが、ジェイミーの純粋さと健気さだ。テロによって失われた姉・ローズの命。両親は悲しみに暮れ、父は酒に逃げ、母は家を捨てた。新しく生活を立て直すため、ジェイミーたちはアンブルサイドという田舎町へと引っ越す。けれど、父は仕事もろくにしないまま酒浸りの毎日。10歳の少年は、亡くなったローズの双子の姉妹であるジャスミンと共に悲壮な環境を生きていく。いつか母が帰ってくると信じて。大人の視点から見れば、わかる。もう母が帰ってくることはないのだと。だけど、ジェイミーはまた家族みんなで暮らせる日が来ると信じてやまない。その残酷な願いを大西が力いっぱい演じることで、一層胸が苦しくなるのだ。大西は、外部への舞台出演は本作が初めて。実年齢20歳の大西にとって、ジェイミーは自身のちょうど半分の年齢にあたる。けれど、まるで違和感がない。あの年齢の男の子特有のぎこちない身振り手振りを見事に再現し、気づけば10歳の男の子にしか見えなくなる。普段のステージではキラキラとアイドルオーラを振りまきながらしなやかに踊る大西が、たどたどしく両手を広げ、鳥を真似たように舞う。その不器用な小学生感に、思わず抱きしめたくなるようないとおしさがこみ上げる。ジェイミーは、母と再会できる日まで、母が誕生日プレゼントにくれたスパイダーマンのTシャツを着続ける。人から臭いと眉をひそめられても、懸命に消臭スプレーを噴きかける。悪臭が消えて、ひと安心したような表情がたまらなく愛らしい。大西の持つ無垢性がジェイミーのキャラクターにマッチし、大人が演じると鼻白むことにもなりかねない児童文学の世界を、嘘のない物語にした。◆多彩なキャストと音楽が描き出す、絶望の先の希望そんなジェイミーに大きな影響を与えるのが、転校先のクラスメイト・スーニャだ。演じるのは、瀧野由美子。常にヒジャーブで頭を覆う彼女は、イスラム教徒。ジェイミー一家にとっては、姉のローズの命を奪った相手となる。もちろん同じ宗教を信仰しているからといって、スーニャに罪があるわけではない。だけど、人間の心理はそんなに簡単に割り切れるものでもない。スーニャと友達であることを知ったら、父はきっと悲しむし怒る。現実に目を背け、酒に逃げる弱い父親ではあるけれど、そんな父親でもやっぱりジェイミーにとっては父親だ。父を傷つけたくないという思いから、スーニャと距離をとったり。でもやっぱりスーニャのことが気になったり。二人の間に芽生える、お互いの存在が救いとなるような関係が眩しく美しい。舞台『湯を沸かすほどの熱い愛』でも大役を務めた瀧野のよく通る声が、スーニャの芯の強さを表していた。音楽劇と銘打つ通り、本作では重要な場面で歌とダンスが効果的に用いられている。ジェイミーの学校生活は決して明るいものではない。いじめに人種差別。子どもが無邪気なんていうのは大嘘で、人の痛みがまだよくわからないから、簡単に他者を傷つける。その無慈悲さを、本作は誤魔化さずに描いている。ただ、ポップな音楽でデコレートすることによって、エンターテインメントとしての華やぎも見せ、緩急ある構成となっているのが特徴だ。ハロウィンに、サッカーの試合。終演後に思い出す景色はどれもカラフルで、どんなに過酷な環境下でも、アルバムの写真がすべて暗い顔で埋め尽くされることはないのだと気づかせてくれる。特にテーマ曲である『飛び立つ勇気』はとりわけ胸に響く。歌唱を担うのは、ジャスミン役のロザリーナ。シンガーソングライターである彼女の、寂しさと力強さが同居したような繊細な歌声が、傷を負った子どもたちの希望となる。専業の俳優には出せない圧倒的な説得力が、彼女の歌声にあった。こうした多彩なバックグランドを持つパフォーマーたちのアンサンブルもまた本作の魅力だ。ニッチェの江上敬子のコミカルな演技も楽しいが、中でも光っていたのがロジャー役の大植慎太郎だ。コンテンポラリーダンサーならではの独創性ある動きは、まさに猫そのもの。また、大植は浅野康之と共に本作の振り付けを担っており、しばしば登場する姉のローズの動きは目を奪われるものがあった。爆破テロによってバラバラになった少女の体を想起させるような浮遊感のある動きが、今も瞼に焼きついている。ファンタジックな手ざわりのある本作だが、決してファンタジーではなく、根底にあるのはシビアな現実であり、その犠牲となるのは罪もなき人々だという理不尽への怒りと追悼の祈りが横たわっている。母ともう一度会うために、ジェイミーは姉のジャスミンと共にタレントショーへの出演を決める。その結末がどうなるのかは、ぜひ劇場で確かめてほしい。特に子どもの頃は、親の愛を絶対的なものだと信じている。そして、親から愛されない自分を欠陥品のように思い込んでしまう。だけど、決してそんなことはない。私たちは、自分を愛してくれる人を選べるし、自分を大切にしてくれない人にいつまでもすがり続ける必要なんてないのだ。私たちは、自分の力で幸せを見つけることができる。悲しみを知りながら強くなるジェイミーが教えてくれるのは、自分の人生を肯定する力だ。同作は12月1日までCBGKシブゲキ!!にて上演。また、12月20日から22日の期間限定で公演の配信も決定している。【Not Sponsored 記事】
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