詩織さんが、元TBS記者でジャーナストの山口敬之氏から性被害にあったことを5月29日の記者会見で明らかにしました。一度は、準強姦罪の疑いで逮捕状が出たというのですが、執行されず、書類送検となりました。その後、検察は、嫌疑不十分で不起訴処分となりました。今回の会見は、不起訴処分を不服として、検察審査会に審査を申し立てた、というものです。
この問題は「週刊新潮」がスクープしていましたが、同誌では匿名で報道していました。しかし、会見では、家族のこともあるため姓は伏せました。しかし、下の名前を公表し、顔を出しての告白でした。性犯罪では被害者への配慮から匿名で報道されることが大半です。裁判でも、遮蔽して、匿名で証言することが多くあります。そいの意味では、とても勇気のある告白と言えるでしょう。
何があったのでしょうか。2015年4月3日、詩織さんは山口氏と面会しています。詩織さんはお酒を飲み、気を失ったのです。翌朝。レイプ被害にあったことに気づきます。4月30日、詩織さんの告発状が高輪署に受理されました。6月8日に、山口氏を逮捕する予定でした。しかし、「上からの指示で逮捕できなかった」と連絡がありました。8月26日に書類送検されますが、16年7月22日、嫌疑不十分を理由に不起訴処分となります。
詩織さんはお酒に強いということですが、この日、気を失っています。疲れていたためでしょうか?いや、どうやら、デートレイプドラッグが使用されて居た可能性があります。どんなドラッグでしょうか。一般的には睡眠薬が使われます。お酒に睡眠薬を入れてしまえば、すぐに眠ってしまう可能性があります。酔いと眠気で、ほとんど抵抗できません。そこで性行為を行うと、デートレイプが成立します。
現行の刑法では「暴行または脅迫を用いて」の性行為は強姦罪となります。13歳未満の子どもを相手にした場合は、同意であっても、強姦罪となります。しかし、デートレイプドラッグを使った場合、抵抗ができませんので、「暴行または脅迫」を用いないことがあります。いわば、相手が十分な判断ができない状態となっているのです。そんな状態でのせい行為は、準強姦罪となります。
強姦座の起訴率をみてみますと、14年は37.2%です。1998年ごろは60%を超えていましたが、最近では不起訴になるケースが多くなっているようです。強制わいせつ罪での起訴率をみると、14年は45.8%。2000年前半は60%近かったのですが、こちたも下がっています。強姦罪よりはやや高い数値です。
これらの起訴率が高いか低いのかを考える上で、窃盗罪の起訴率をみて見ます。男性ですと、こちらも減少傾向のようですが、15年は50.3%。女性の場合は逆に上昇傾向で15年は38.4%です。窃盗での起訴率と強姦での起訴率を単純比較はできませんが、それほど大きな差はないようです。
詩織さんは会見で、「今の法律では難しい」と警察が言ったと述べています。しかし、準強姦罪で有罪になることは難しいことではありません。しかし、事実関係を争うと、客観的な証拠が必要になります。そのため、防犯カメラの映像やホテルのベルボーイの証言、タクシー運転手の証言を入手したようです。
一方、警察は「相手がTBSだから難しい」、または「相手が政権側の方ととても近い」とも話していたようです。もし、そうであれば、警察側の忖度が働いたのかもしれません。あるいは、山口氏が人脈を使ってもみ消しをさせたという疑いもゼロではありません。忖度は十分に考えられるでしょうが、もみ消しが仮にあったとしても証明することが非常に困難です。
そのため、不起訴が妥当かどうかを訴えることが常套手段になるでしょう。だからこそ、証拠集めがキーになります。裁判になったとして、有罪になるか、無罪になるのかはわかりません。しかし、被害を受けたと訴える側はここまでしないといけないでしょうか。
そもそも山口氏に詩織さんが連絡を取るようになったのは就職の相談です。そうした相手に、性的な関係を求めること自体、セクハラ、パワハラになる可能性が非常に高い。私としては、今回の事件が違法性があるなしに関係なく、セクハラにあたると思ってしまいます。睡眠薬を飲ませた上での行為であれば犯罪になると考えざるを得ません。ぜひ、山口氏には法廷できちんと証言してほしいものです。
[執筆者:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》
page top