・列島震撼…「山口連続殺人放火事件」
今年7月、山口県周南市にある8世帯の小さな集落で、一夜にして5人の命が絶たれる事件が起こった。被害者は全員が70歳以上、いずれも木の棒で殴打され頭蓋骨骨折や脳挫傷で亡くなっている。しかも、うち3名の住宅には放火までなされるという凄惨さ…「山口連続殺人放火事件」が世間を大きく揺るがしたことは記憶に新しい。
逮捕された63歳の保見光成容疑者は同集落出身、中学卒業後は神奈川県で暮らしていたが、母親の死をきっかけに40代で帰郷。実家で父親の介護にあたっていたものの、死別後は地区住民とのトラブルが相次ぐようになったという。
<「津山事件」との類似点>
深い山間、小さな地域社会、容疑者の家には「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」と書かれた意味深な張り紙…。一種異様な事件背景は、各種メディアに"現代の八つ墓村"とまで例えられた。そして引き合いに出されたのが「津山事件」である。
またの名を「津山三十人殺し」とも呼ばれる大虐殺事件は、1938年に岡山県の貝尾・坂元両集落で発生した。当時の記録によると、貝尾地区は全戸数23戸・人口111人、坂元地区は全戸数20戸・人口94人…この小規模な集落で、2時間足らずのうちに30人もの犠牲者が出た。
折しも世は戦争へと突き進む時勢、娯楽も少なく交通網も未発達…現代の集落よりもさらに閉塞的な地域社会であったことは容易に想像できるだろう。長編推理小説の金字塔「八つ墓村」の冒頭に登場する"村人32人殺し"のエピソードは、重鎮・横溝正史が同事件をモチーフにしたと言われている。
この「津山事件」と「山口連続殺人事件」…ふたつの事件に見られる類似点で最も分かりやすい部分と言えば、やはり高齢者が多い"限界集落"で発生した点、大人数が一度に殺害された点だろう。
<集落で孤立する容疑者…袋小路の人間関係>
どちらの事件も、その根底には"犯人の集落での孤立"がある。これほどの惨劇となれば、被害者と犯人の間に何の軋轢もない突発的な事件だったとは考えにくい。一部メディアでは「酒の席で保見容疑者が被害者に刃物で刺された」「草刈りの際、保見容疑者の農機具が草と一緒に燃やされてしまった」「飼っている犬が臭いと文句を言われ農薬をかけられた」といった過激なトラブルがあったことを報じている。また保見容疑者は2011年に「集落の中で孤立している」「近所の人に悪口を言われて困っている」と警察に相談した記録もある。しかし一方で住民側は、メディアが報じるような"いじめまがいの出来事"について、存在を否定しているという。
いまだ多くの謎が残されている「山口連続殺人」だが、NewsCafeでもふたつの事件の類似点に注目し「なぜ田舎の人間関係は泥沼化するのか?」というテーマで、ユーザーのコメントが募集された。当記事では賛同の多かった意見や印象的なコメントを紹介していきたい。
※コメント総数…368件
【多数派コメント】
まずは賛同の声が多かった意見から。
■私は東京都渋谷区に住んで30年になりますが、20歳まで出身地の茨城県の山奥で育ちました。もう絶対に田舎には戻りたくありませんね!! 高卒でしばらく浪人生活をしていましたが近所の人たちの下世話な噂に振り回されて辛かったですね。「働かない変人、変態、変わり者」、果ては犯罪者にまでされてしまいました。あのまま茨城にいたら恐らく追い詰められて事件を起こすか自殺か精神的に病んでいたことと思います。[50代男性]
■田舎って、本当に勝手な人が多い。自分が得する事は、グイグイ首を突っ込んでくるクセに、面倒な事は人に押し付け、知らん顔。だから、私もそれなりの対応しかしないし、集まりにも参加しない。勝手に玄関開けるのも腹が立つから、必ず鍵かけてる。訪ねてくる奴みんな「鍵かけてるなんて異常」みたいな面してるから「他人の家を勝手に開けるのは泥棒がする事ですよ」って言ってやったら、チャイム鳴らすようになりました(笑)。[30代女性]
■田舎育ちですが、一言! 田舎は娯楽がなさ過ぎて人の噂話が大好きなことと、仲間意識が強すぎてコミュニティー外の人間を排斥しようとすることがあるだけで皆、純朴ですよ。ただ、純朴すぎて悪意のある人が意図的に流した噂でもまるっと信じて、偏見持ったり攻撃をしだしたりするのが玉に傷かな? 正直、都会に出てきて良かったと思ってる。田舎で生活するには「社会の歯車」ならぬ「地域の歯車」になれる才能が必要。[40代男性]
[文・能井丸鴻]
《NewsCafeコラム》
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