定年を3月末に控えた公立校教員らの"駆け込み退職"が全国で相次ぎ、連日メディアで取り上げられているのはご存知のとおり。2月6日現在、その数は全国で250人を超える見通しだ(時事通信社)。
そもそも、なぜこのような騒動になったのか。国家公務員の退職手当引き下げを盛り込んだ改正条例施行にあたり、いくつかの自治体が施行時期の足並みを国に揃えようとした。すると「引き下げ前に辞めた場合と引き下げ後に辞めた場合とで退職金に大きな違いがでる」という事実が発覚。3月末日の退職を繰り上げ、法案施行前に退職する人たちが出てきたということらしい。
例えば埼玉県の場合、2月1日の条例施行で退職手当が約150万円減額される。しかし1月末に退職してしまえば、3月まで勤めて2カ月分の給料をもらうよりも、総額で約70万円多く受け取れるという。
そして"駆け込み退職者"のなかには、担任としてクラスを受け持っている教員も含まれている。下村文科相をはじめ各方面から「仕事への誇り」を問われる彼らだが、一方で「なぜこの時期に条例改正を?」という声も後を絶たない。
疑問視されるのもそのはず、この引き下げ法案が成立したのは平成24年11月16日…衆議院解散の日である。民主党政権最後の日の"駆け込み法案"というわけだ。
そこでNewsCafeでも「駆け込み退職、どう思う?」というアンケートを実施した。ランキングとともに寄せられた声をご紹介しよう。
※回答総数…1911件
【教員の「駆け込み退職」は致し方ないと思う(54.6%)】
■退職金減らされるんじゃ仕方ないよ![男性/20代/会社員]
■制度の問題。ボランティアじゃないんだから、自分にとってより得する方を選択するのは当然。若い人なら今後の生活もあるから安易に退職できないししないけど2ヶ月後には退職するんだから。[女性/30代/会社員]
■行政の制度のミス。2月に設定したのが悪い。子どもの事を無視しているのは役所の偉い人だ。[女性/40代/主婦]
■現場をおっぽり出すのは「?」と思うけど…教師(公務員)も人の子。家庭やなんやかんやの事も大事でしょうから。[女性/40代/専門職]
■これは理解出来るし何も考えなかった県が悪い。150万円の差はデカいし学校や生徒よりもまず自分の生活を考えるよ。[男性/30代/会社員]
■新年度からにすれば、何の問題もなかったのに。[女性/40代/主婦]
【教員の「駆け込み退職」は許されないと思う(35.2%)】
■気持ちはわからないでもないが、担任を受けもってる子供たちの事を考えるといかがなものかと…子供たちに何と説明するの? 責任はきちんと果たしてほしいと思う。[女性/50代/主婦]
■教師として生徒に責任を持って欲しい。退職金が2800万ちかくもあるならその内の150万くらい減っても良いと思う。また、退職後も手厚い年金を貰えるのだから。[女性/50代/自営業]
■生徒などへの迷惑をかえりみず自分の利益しか考えてない。[男性/40代/会社員]
■最後までやりきったという誇りより、老後の安定を取るんじゃ、その人の教員人生って大したことない。「そういう人だったんだ」っていう記憶しか残らないと思う。[女性/40代/会社員]
■施行時期が悪いとは言え、仕事に誇りを持っていたとは欠片も感じられない。[男性/30代/自営業]
■子供が常にないがしろにされる…世も末ですね。[女性/10代/会社員]
【わからない・その他(10.2%)】
■栃木県では退職者は出なかったと聞いていますが? 埼玉県は組織的にやったのでしょうか? 辞めた教師たちは、他の私立学校や、塾の講師に決まっているそうです。2000万以上貰うんですね! うらやましい![男性/50代/その他]
■教師も家庭があるだろうが、残された生徒達は? どこに不満をぶつけたら?[男性/10代/専門職]
■双方の気持ち、痛いほど理解できるから、わからないになります…。[女性/40代/フリーター]
■そもそも2月からにしたらこうなると予測しなかったの?[女性/40代/主婦]
結果は、駆け込み退職を「仕方ない」と感じている人が半数を超える多数派だが、一方で「許されない」と考える人も3割を超えている。両派に共通して「職務を全うしない点には疑問を感じるが、そもそもこの時期の条例改正に納得がいかない」というコメントが多数寄せられるなど、はたから見ても腑に落ちない点が多いことは間違いないようだ。
なかには「教師生活の最後に社会の厳しさ・汚さ・お金の大切さを身をもって教えたのでは(笑)? 世間の冷たい眼にも負けずにさ。さすが聖職者(笑)」と辛らつな声もある。しかし、一部の自治体では、駆け込み退職を防ぐ目的で年度内の施行を避けたところもある。突然の改正法案に対し各自治体にも混乱はあったろうが、対処法は皆無ではなかったのだ。
現場の混乱、自治体の混乱…この一連の騒動から感じられるのは、やはり「引き下げ法案の内容や成立時期に工夫はできなかったのか」という疑問。議論に"たられば"は禁句と言えども、どうしても"公務員退職金をカットしました"という実績を作りたいがための成立時期だったように思えてしまう。そして、そのしわ寄せは子供たちに…。起こってしまったこととはいえ、寄せられた声からもやる瀬なさが伝わってきた。
[文・能井丸鴻]
[写・ajari]
《Newscafeアンケート》
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