最近出版されて話題の本がある。「ドイツは日本の学校給食から学べるか」というタイトルで、専門家のドイツ人、フォルカー・パイネルトが発表した。その本には日本では、給食は「教育の一環」として義務化され、配膳や片付けなどの準備には児童も携わることが紹介されている。この本に今注目が集まっているのは、最近、ドイツで起こった、過去最大と言われる食中毒事件の原因が学校給食と見られるからだ。ドイツでは一部の小学校や幼稚園は学校給食を取り入れている。しかし、9月下旬、ドイツ東部の学校や幼稚園の生徒・児童数千人が相次いで、吐き気など食中毒の症状を訴える事件が発生した。いずれも同じ業者が給食を納入していたことから、給食が原因との見方が強まっているのだ。食中毒発生の背景には、国も関与して制度が確立されている日本と異なり、さまざまな点で課題を抱えているドイツの学校給食事情がある。ドイツ国内の地方自治体は慢性的な財政不足に悩む所がほとんど。地方自治体が管轄する給食への支出も限られる上、保護者も給食費の負担が増えるのを嫌がり、適切な設備や職員を確保できないという。その点で日本はドイツよりも進んでいると、パイネルトは言うのだ。しかし、考えてみれば日本の地方自治体だって、この不況の中で財政的には厳しいはずだ。一見当たり前に思いがちな小中学校の給食。その上の世代、義務教育ではない高校まで学校給食を本格的に始める事になったら、一体そのツケはどこに回ってくるのだろうか。
そこでNewsCafeのアリナシコーナーでは「高校まで給食実施。これってアリ?」という調査を実施。結果と共にさまざまな意見をご紹介しよう。
【アリ…61%】
■弁当の手間がはぶけそう(笑)。
■お弁当は食中毒が心配です。特に夏は…。
■朝5時半起きの弁当&朝食作りはきついっす。
■お弁当のより給食のほうが、経済的だし栄養バランスもいい。
■給食が無理なら格安の学食をお願いします。
■親としてはお給食は有り難いです!
■自分は中学から弁当だった。面倒だから給食でいいよ。
【ナシ…39%】
■学食や購買部があるのだから給食までは要らないかな。
■甘やかすな。給食費を支払わないバカ親が増加するだけ。
■さすがに高校は、給食じゃなくて学食でいいのでは?
■高校生活には、学食も1つの楽しみ。給食じゃつまらないよ。
■小学校、中学校で給食費を払わない人がいるのに、高校でもするの?無理でしょ。
■義務教育じゃないのに公立高校学費もタダになった上に給食まで!?
【アリ派】が全体の6割以上を占める結果に。その中を見てみると、「弁当をつくる手間が省ける」という回答がほとんどだった。そのほかに、「弁当よりも経済的」「栄養バランスがいい」など給食はいいところ尽くしのようだ。一方、【ナシ派】を見てみると、「高校には学食、購買部がある」「学食は高校生活の1つ」など、中学校までで十分という意見が多かった。そのほかに、「給食費をきちんと支払わない親もいるのでは?」という疑問を投げかけた人もいた。
日本の学校に関する法律の中では、「義務教育諸学校」という専門用語が出てくる。当然、中学校までを指す言葉だ。言うまでも無いが高校は義務教育ではない。さらに給食自体は、「義務教育諸学校」の小中学校でも法律的に義務づけられてはいない。公立の場合は給食をやるか、やらないか、どのようにやるかは市区町村や都道府県の考えだけで決まる。私立なら、その学校法人の考え方に従う事になる。だから、私立中学だろうが、高校だろうが給食を出すところは出しているのが現状なのだ。さらに給食を実施するには費用がかかる。給食室を作り、人を雇ったり各自治体、学校法人に重い負担が強いられる。それなのに必要な給食費を回収できなければ、「学校崩壊」という事態にまでなってしまう可能性もある。昨今、授業料などを支払えずやむなく中退せざるを得ない学童、生徒がいて、問題化しているのはニュースでもよく取り上げられる。保護者からすればさらに経済的負担を強いられるのは大変、と考える人もいるのが現状のようだ。
[文:羽生弘]
《NewsCafeアリナシ》
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