駅などに置いてあるフリオーペーパーを手に取ることがあるのだが、その種の冊子にはよくアルバイトの求人広告ページがある。
そこには時給、シフトなどの条件面の他にさまざまなキャッチコピーが並んでいる。「未経験者歓迎!」「若いスタッフがいっぱいです」「カフェのようなオシャレな雰囲気の職場です」「正社員登用あり」「月収30万円以上可能」などなど……。
そういったキャッチコピーの中で、よく目にし、いつも気になるものがある。
「アットホームな職場です」という例のヤツである。
このキャッチコピー、いまだによく使われているが、私が高校生時代(20年近く前)のアルバイト情報誌でも見かけていた。もはや求人広告業界では伝統的なキャッチコピーとして定着しているのだろう。
「アットホームな職場です」……このキャッチコピーを目にして「おっ、この店アットホームな雰囲気なんだ。よし応募してみるか」という人がいるのかだろうか。
確かに職場でいじめがある、話しかけてくれない、仕事を教えてくれない、怒号が飛び交う…といった殺伐とした空気の職場は絶対に嫌である。
できれば人間関係が良好な職場で働きたいという要望は多くの人が持っているだろう。
しかし「人間関係が良好」であることと「アットホーム」すなわち「家庭的」であることは、まったく別のことではないのか。
突然、他人である職場の人間から家族的な雰囲気で接せられても困惑すると思う。
また、アットホームな職場に勤める以上、その職場では自分も家族的な雰囲気を醸し出すことを求められるということである。もちろん仕事もしなくてはならない。その両立はかなりハードルが高い。わざわざハードルの高さを求人広告でアピールしないでもいいではないか。
希に家族経営のために、どうしても職場が家庭的になってしまうケースもあるだろう。
そういう場合に限って「アットホームな職場です」は、アリとしたい。
「俺たちみんな仲間…いや家族だろう!」といった感じ接してくる先輩や上司が非常に苦手であるので、ことさら「アットホームな職場です」のキャッチコピーが気になって仕方がないのだろう。
ところで、学生時代に私がアルバイトをしていたビデオ店でも「アットホームな職場です」という求人広告を店の窓ガラスに貼っていた。
暇なビデオ店であったため、シフトは常にアルバイトの一人制。遅番と早番の引き継ぎの5分間以外に、他のアルバイトに会うことはない。店長も集金以外に店にこなかった。
あの「アットホームな職場です」の求人広告は店長の冗談だったのだろうか。
[編集後記~Newsスナック/NewsCafe編集長 長江勝尚]
《NewsCafeコラム》
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