阪神大賞典といえば、競馬ファンの脳裏には真っ先にナリタブライアン&マヤノトップガンによるマッチレースが浮かぶ。しかし、今後阪神大賞典のレース名を聞けば、オルフェーヴルの事しか頭に浮かばないくらいの衝撃的なレースだった。まるでゲームかマンガのよう…。現実では考えられない走りをオルフェーヴルは阪神競馬場に集まったファンに見せ付けた。
ずば抜けた能力と激しい気性を持ち合わせている同馬にとって長距離レースでの「折り合い」は今年の最大目標である凱旋門賞を勝つためには絶対条件だ。結果的に2着に敗れる形となってしまったが、凱旋門賞を勝てるだけの能力があることを再認識させられた1戦だった。
まず最初の誤算はスタートが良すぎたこと。池添騎手は抑えて外の3番手でレースを進めようとしたが、外からナムラクレセントが一気に進出。ここでオルフェーヴルの闘志に火がついてしまった。最初は並走する形であったが、抑えきれずに先頭へ。今まで見たこともないレースぶりに場内からはどよめきが起こる。
異変が発生したのは2週目の3コーナー。右に曲がるはずが外ラチへ向って暴走。池添は右の手綱を引っ張り必死でコントロールしようとするがオルフェーヴルは急減速。この瞬間誰もが「故障発生か?」と感じたはずだ。この時点で先頭から10番手まで後退。常識的に考えればここでレースをやめてもおかしくないほどの事態だった。
しかし、ここから3冠馬の信じられない能力が爆発する。体勢を整えたオルフェーヴルはハミをとり一気に加速。最終コーナーを曲がる頃には再び先頭に立つ勢いだった。最後の直線に入ると1頭、2頭と交わし残るは前を行くギュスターヴクライだけ。最後は半馬身及ばずの2着だが、上がり3ハロンはメンバー最速の36秒7。普通に走っていたらどれぐらいの差をつけて勝っていたのだろうか…。
前代未聞のレースぶりが逆に評価を高めているが、冷静に考えれば3冠馬として、世界トップを目指す馬としてこの内容は褒められるものではない。これまで大事に教えてきたことが今回の1戦で水の泡になってしまう可能性があるからだ。抑えるのか、行かすのか。レース中の曖昧な判断がオルフェーヴルの機嫌を損ねてしまったように見えた。世界レベルの能力を持っていてもそこは勝負の世界。1着以外は何の意味もない。
凱旋門賞までまだ時間はある。先頭を走るとレースが終わったと勘違いしてしまうことも分かった。生まれ持った気性であり簡単に矯正することは難しいが、本番前に分かったことは不幸中の幸いだろう。次走に予定する天皇賞・春では生まれ変った姿を見せてほしい。
《NewsCafeコラム》
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