究極のアウェー IN平壌 | NewsCafe

究極のアウェー IN平壌

スポーツ ニュース
これまでに見たアウェー戦で最も衝撃を受けた1戦だった。11月15日に北朝鮮・平壌で行われた日本vs北朝鮮は何もかもが異例尽くし。マスゲームさながらの北朝鮮サポーターに圧倒された日本代表は結果的にザッケローニ監督就任後初の黒星を喫することとなってしまった。

広く知られるように日本と北朝鮮には国交がない。拉致、ミサイル問題など両国は常に緊張感のある関係が続いている。今回に関しても試合前からどうしても政治的なイメージが先行してしまいメディア、サポーターも含めた日本代表一団が経験したことのない緊張感に襲われたことは容易に想像できる。

この試合すでに最終予選突破を決めている日本代表にとっては消化試合。最終予選に向けてサブのメンバーやまだ完成されていない3バックを試すなどいくつかの選択肢はあった。対する北朝鮮はすでに予選敗退が決定しているが、ホームで、しかも相手は日本。ある意味ワールドカップ出場以上のモチベーションだったのかも知れない。

日本代表はタジキスタン戦から若干のメンバー変更でこの試合に臨んだ。DFは吉田に代わり栗原、左サイドバックに伊野波、そしてボランチに細貝が入った。試合はホームの大声援を受けた北朝鮮が積極的に前に出る。元来守備を固めて攻撃の典型的なカウンターサッカーが特徴の北朝鮮だがこの日は様子が違った。前線のチョン・テセ、チョン・イルグァンをターゲットにロングボールを次々に放り込んでくる。さらには日本の左サイド(伊野波と細貝の間にできるスペース)を狙い攻めを仕掛けてきた。

逆に日本は中盤でパスは回るが両サイドの上がりが少なく、真ん中で動きが止まっていた。北朝鮮もエリア内はガッチリと守備を固めており、縦へのスペースも少ない。先に述べたように伊野波と細貝の位置での関係性が曖昧で、攻撃にしても守備にしてもこの部分で不安定さが目立った。

後半に入っても流れはそのまま。そして48分。センターサークル付近でフリーキックを得た北朝鮮がゴール前にロングボールを蹴り込む。これをパク・ナムチョルが頭で合わせ日本は先制を許すことになった。先制点で勢いづいた北朝鮮は守備に回ることなくさらに攻撃を仕掛けてくる。日本も立て続けにハーフナー、李を投入して得点を狙ったが最後まで北朝鮮ゴールを脅かすことはできなかった。

試合後にザッケローニ監督が「勝ちたい気持ちのレベルが違った」と語った通り、この試合に関して言えば技術うんぬんよりもメンタル面での差が出たように感じる。よく報道にでる「負けたら厳しい罰が待っている」かどうかは定かではないが、試合後のまるでワールドカップに優勝したかのような喜びを見ると、北朝鮮にとっては絶対に負けらない試合だったのは確かである。

敗れはしたがこの敗戦を引きずることはない。考えなければならないのは来年6月から始まるアジア最終予選、さらにその先の2014ブラジルワールドカップだ。今回ほどのアウェーはなかなかお目にかかれないだろうが、様々な試合展開に対応できる順応性がなければ本大会でもいい成績を収めることはできない。その意味ではこのアウェー平壌は選手にとって貴重な経験になったと言っていい。

ザッケローニJAPANはチームとしての方向性、目指すサッカーの基盤はこの1年で作り上げることが出来た。来年はバックアップメンバーの成長、新戦力の発掘がテーマになってくる。宇佐美、宮市、永井など期待される若手の台頭も鍵を握る。おそらく日本代表は来年の今頃はもう1段階上のレベルに達しているはず。アジア杯優勝から始まった2011年の戦いぶりは、それだけのことを期待させてくれる内容だった。きっと見たことないレベルの日本代表が見れる……。そんなワクワク感を想像しながら来年を待ちたい。
《NewsCafeコラム》
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