何気なく買い、種から育ったなでしこが3年目の今年も美しい花をプランターの中で咲かせている。なでしこは可憐なだけではなく、同時に強い花でもある。
コラムを書いていると"書かざるを得ないテーマ"がある。最近では腹が立つテーマが多いが、今回のサッカー女子ワールドカップでの「日本代表・なでしこジャパン」の金メダル獲得は、久々に嬉しいニュースだ。新聞報道も「おめでとう日本女性・大和なでしこの奇跡・日本サッカー史上の快挙・諦めない心の勝利…」などの見出しが踊っている。
サッカーは世界最大の競技人口をもつキングオブスポーツである。日本人はオリンピックで勝つことを評価しがちだが、ことサッカーで言えばワールドカップこそが最高のステータス。その女性版での優勝は大変な快挙だ。専門家は「日本男子チームがワールドカップで優勝するには天才的プレーヤーの出現を期待しても20年かかるし、永久に不可能かもしれない」と述べているが、そんな話を聞けば聞くほど今回の優勝の価値がよく分かる。
今回のなでしこジャパンの勝利の価値は"経済的な環境に恵まれない選手&日本人の監督"で勝利した事である。佐々木監督の「小さな娘たちが粘り強くガンバった結果である」と言う言葉に大きな重みを感じた。まさに頑張る女性が目に付く日本の象徴だ。
褒め言葉はこれぐらいにして別の角度から見てみたい。
私の中学生の姪は地域の小学生・中学生の女性だけのサッカークラブで練習に励み、ソコソコの腕前の様だが、高校ではやらない様である。それは「女子のサッカーでは食えない」から。全国にスポーツ少年団があり、Jリーグの誕生と共にサッカー少年団が数の上でも多数となったが、女性の団は少ないのが現状だ。優勝を争ったアメリカの女子サッカー人口は日本の5万人に対して30倍の150万人。その層の厚さは日本と段違いであり、女性のプロサッカーリーグも2つある。運動神経のあるアメリカ女性はゴルフやバレーボール意外でもサッカーのプロを目指すことが可能なのだ。
Jリーグが出来た動機は「サッカー少年がサッカーで食ってゆける仕組みがいる=プロリーグを作ろう&ワールドカップに出場しよう」というもの。今回の優勝と言う快挙を後世に生かすのは「恵まれない女子サッカーにダイナミックな仕組み」を導入する事だと強く感じる。
そして同じ男性ではあるが佐々木監督のチームマネージメントを高く評価したい。イケメンという個人的特性はさておき"横から目線・駄洒落を恥じずに選手を和ませる、おじさんだが身なりはキチッと"がポイントの彼は、女子バレーボールを金メダルに導いた故大松監督時代の「俺について来い・トレーナー姿」とはコミュニケーションが異なる。多くの会社で見られる「頑張る女性社員&中年オジサンの上司」といった組み合わせが多いが大いに参考になると思う。
最後にアメリカチームのGKの「とても悔しい。だが日本チームは素晴らしい。戦えた事は名誉である」のコメントに感謝する。
[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》
page top