「年越しは、実家に兄夫婦がくるので居場所がない。今回はどこかのホテルに泊まろうと思っていた」というヨシオさん(39)も参加した1人です。
母親が常に先回りして世話を焼いてしまい、「よい子」であることを求められたのです。
子どもの頃、ヨシオさんは「母親の期待に応えないといけない」と思ったそうです。
そのためもあり、「反抗期もなく、自分でも何がしたいのかわからない」というのです。
結果、慢性的に死を考え、酒に溺れることも。
タバコを手の甲に押し付ける自傷行為をしたこともあったといいます。
えりなさん(33)は、家族から存在を否定されてきました。
そのため自殺未遂も経験してきています。
半年前にも睡眠薬を飲んで死のうしましたが、気がついたら病院のベッドの上にいたそうです。
直接的なきっかけはなく、慢性的な絶望感がそうさせたのだといいます。
そんな時、えりなさんは、自殺を考えている人たちと文通をする「自殺対策に取り組む僧侶の会」を知り、「遺書代わりの手紙」を書いたのです。
そこで、今を生きる気持ちを支えている僧侶と出会います。
「人は捨てたもんじゃない」
この言葉を胸に自分を支えています。
シュウさん(56)はこれまで4回、死のうとしたそうです。
小さい頃から周囲と馴染まず、コミュニケーションがうまく取れませんでした。
そのまま社会に出て行ったのですが、居場所のなさを常に感じてきました。
23年前、愛知県の自動車関連の工場を辞め、山中を彷徨い、首を吊ろうとしたことが最初の未遂でした。半年前も死のうとしたそうです。
しかし、「いのち村」に参加して、空き缶に「自己肯定缶」と書くレクレーションをしていた時、シュウさんの目の輝きが違っていました。
「これまでは逆のこと(自己否定)をしてきました。このゲームっぽさが気持ちを和らげてくれた」と話しました。
代表の尾角さんは
「『年越いのちの村』は問題解決の場ではないため、目に見える成果があったわけではありません。でも、参加者もボランティアもみな"村民"として、痛みの種類こそ違えど、各人が抱いてきた『痛み』を介してつながりました。少し止まり、つながり、またそれぞれの日常に戻って行く、といった『止まり木』として役立てたのならありがたい」
と話しています。
人は誰しも悩みを抱えます。
問題が解決できなくても、時間が解決する場合もあるでしょう。
しかし、問題を解決できず、時間だけが過ぎていき、より問題が複雑になっていくこともあるのです。
そんな時、悩みを吐き出したり、ただ一緒にいるだけの場があれば、少しは気が楽になるのかもしれません。(終わり)
※写真:書初めで表現するのは…
《NewsCafeコラム》
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